愛し愛され愛を知る。【完】
「どうした?」
「え?」
「眉間に皺が寄ってるぞ?」
「あ、いえ、すみません、何でもないんです」
「そうか? 思ってる事や不安な事は何でも話してくれて構わねぇんだぞ?」
「…………」

 真彩は思う。今が、話をするチャンスなのかもしれないと。

「り、理仁さん――」

 意を決して口を開きかけた、次の瞬間、

「うわぁぁぁん! ママぁ!」

 つい今しがたまで大人しく寝息をたてていた悠真が大声を上げて泣き出した。

「ゆ、悠真? どうしたの?」
「うわぁぁぁん、こわいぃ」
「怖い夢でも見たんだろう」
「よしよし、大丈夫だよ」

 布団から悠真を抱き上げて背中を優しく叩きながら声を掛けて泣き止ませようとする真彩。

「理仁さん、ちょっといいですか?」
「ん? ああ、今行く。真彩、何か言いたい事があったんじゃねぇのか?」

 外から組員が声を掛けられ返事を返すと真彩に言いたい事があるのではと問い掛ける理仁。

「あ、いえ、大した事ではないので大丈夫です。気にしないで下さい」
「そうか? 何かあればすぐに言ってくれ。それじゃあな」
「はい」

 結局、話そびれてしまった真彩は小さく溜息を吐くと、未だぐずっている悠真をあやし続けていた。
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