愛し愛され愛を知る。【完】
「真彩、俺の子供(ガキ)は連れて来なかったのかよ」

 話し合いの場所はあるホテルのスイートルームで行われる事になり、翔太郎は部屋の外へ、朔太郎は真彩と共に部屋の中へと入り、先に着いていた惇也と対面したのだけど惇也は真彩の顔を見るなり悠真が居ない事を尋ねてくる。

「連れてなんて来ないわよ。あの子は何も知らないのよ? それと、『ガキ』って言い方止めて」
「呼び方なんてどうでもいいだろ」

 会って早々不穏な空気漂う室内。惇也の付き添いと見られる若い男は我関せずと言った様子で直立したまま微動だにしない。

「それより、俺はお前と二人きりで話したいんだよな、そっちの男、敵意剥き出しでうぜぇしよ」

 惇也はあからさまに不機嫌な表情を浮かべながら真彩の横に控える朔太郎を睨みつけると、

「誰がお前みたいな男と姉さんを二人にするかよ! 面談は付き添い付きでって決まってんだからガタガタ文句言ってんじゃねぇよ」
「ああ? お前、下っ端のくせに随分偉そうだなぁ? 俺が誰だか分かって口聞いてんのか?」
「ああ、分かってるさ。言いたい事は山程あるけど、今は俺が口を出す場じゃねぇからな。このくらいにしてやるよ」
「何だよ、言えよ? 今なら発言を許してやるぜ」
「惇也、止めて! 貴方は私と話をするの。さっさと始めましょう」
「……ッチ」

 言い合いに発展しそうな惇也と朔太郎の間に割って入った真彩が惇也を睨み付けながら言うと、面白くなさそうな表情の惇也は舌打ちをしながら顔を背けた。
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