愛し愛され愛を知る。【完】
 向かい合わせで座った惇也と真彩。なかなか話を始めない二人だったけれど、覚悟を決めた真彩が口を開く。

「惇也、早速だけど、私から話しをする。結論から言うけど、私も悠真も貴方の元へ行く気はありません」

 そう口にした真彩に驚く事も無く、惇也は黙ったまま。

「それと、これから先も悠真には貴方が父親だと言う事は話したくないの。私たちは、貴方とこの先も関わり合いたくない。これが、今の私の気持ちです」

 真彩が言い終えてもなお惇也は何も言わず黙ったままで、真彩もそれ以上口を開く事は無く、再び無言が訪れる。

 どのくらいそのままだったか、五分以上は続いていたであろう状況に耐えられなくなったのか、その沈黙を破ったのは朔太郎だった。

「おい、何とか言ったらどうなんだよ? 姉さんは自分の気持ちを伝えた。それに対して何かねぇのかよ? 何も答えないって事は、お前もそれに納得したって事でいいのか?」
「おいお前! 二人の会話に口出しするなよ!」
「ああ?」

 朔太郎の発言が気に入らなかったのか声を上げたのは惇也の付き添いとして側に控えていた男で、喧嘩腰の相手に苛立った朔太郎が詰め寄ろうとする。

「朔太郎くん!」
(てつ)、黙ってろ」

 そんな二人を見兼ねた真彩と惇也は共に声を掛けてそれぞれを制し、

「惇也、思う事があるならハッキリ言って。私は今日この場で全てを終わらせたいから」

 真彩は何も言って来ない惇也へ再び言葉を投げ掛けた。
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