愛し愛され愛を知る。【完】
「…………?」
「何だ、どうした?」
「いえ、あの……何だか、視線を感じたものですから……」
「何だと?」

 真彩の言葉に当たりを見渡す理仁だが、怪しい動きをする人物は見当たらない。

「すみません、さっきも感じた気がしたんですけど、やっぱり勘違いだと思います。疲れてるのかも……」
「さっき? ここへ着いてからか?」
「いえ、ホテルを出て駐車場で車に乗り込む時です……」

 真彩のその言葉に何か思い当たる節があるのか考え込んだ理仁は、

「着いて早々悪いが、店を出るぞ。真琴、荷物を持って帰れ。俺は朔が乗ってきた車に乗る」
「分かりました」
「理仁さん?」
「真彩、悠真に言い聞かせて帰る支度をしてくれ」
「あ、はい……」

 それだけ言うと理仁は朔太郎に何かを話し始め、二人の表情は余裕の無いものへと変わりつつあった。


「ゆうま、もっとあそびたい!!」
「悪いな、また今度連れて来てやるから、今日は帰るぞ」
「うわーん! やだー! いまがいい!」
「悠真、我がまま言わないで」
「やだぁー!」

 楽しく遊んでいた悠真を説得するのはなかなか難しく半ば無理矢理連れ帰ることになったのだけど、納得出来ない悠真は車内で泣き叫んでいた。
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