愛し愛され愛を知る。【完】
「理仁さん、やっぱり()けられてます。()きますか?」
「ああ、頼む」
「了解っス」
「理仁さん、尾けられてるって……」
「真彩の感じた視線は気のせいじゃ無かったって事だ。相手は恐らく八旗組か箕輪組……とにかく箕輪の傘下の奴らの線が高い」
「え?」
「お前や悠真を巻き込みたくはねぇんだが、真琴に任せて万が一の事があっても困る。寧ろ俺の傍に居る方が守ってやれるからな、我慢してくれ」

 車は街中から離れ、高速の方へと向かって行く。

「何処へ、向かうんでしょうか?」
「箕輪組のアジトに向かう。恐らく箕輪の組長は関与してねぇはずだが、直々出向いて確かめる」
「だ、大丈夫なんですか?」
「翔を先に向かわせている。危険な状況ならば翔や朔と逃げればいい。だから心配するな」

 こんな状況でも常に真彩と悠真の心配をして安心させようとする理仁。何が起きているのか容易に想像出来る事ではないものの、理仁や朔太郎がいつになく焦っている状況を見る限り、あまり(かんば)しい状況では無いという事だけは真彩にもひしひしと伝わっていた。

 自身は勿論悠真の事も心配ではあるものの、それ以上に理仁の身を案じる真彩。

 泣き疲れたのか少しずつ大人しくなっていく悠真をギュッと抱き締めながら、震えそうな身体を必死に落ち着かせていた。
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