愛し愛され愛を知る。【完】
「駄目よ、買わないから戻して来て」
「いやー!」
「姉さん、俺が買いますよ」
「朔太郎くん……いいのよ、悠真にも我慢を覚えさせないと、我がままな子になっちゃうし……」
「まぁ、確かに我慢も大切ですけど、ここでまた駄々を捏ねても大変ですし」
「……確かに……。仕方ない、私が買ってくるから悠真の事お願いできるかな?」
「いや、俺が……」

 朔太郎と真彩がそんなやり取りをしているところで、

「やべぇよ、拳銃持ってる男が居るって!」
「えぇ!? 撮影か何かじゃなくて?」

 外から店の中へ避難するように人がなだれ込んでくる。

「拳銃……? 朔太郎くん理仁さんは?」
「外で煙草吸ってるはずっスけど……。俺が様子見てくるんで、姉さんと悠真は中に居てください」
「分かった……。悠真、勝手にお外に出ちゃ駄目だよ……あれ? 悠真?」

 様子を見に行くという朔太郎を見送り、勝手に外へ出ないように声を掛け、傍にいるはずの悠真の手を繋ごうと下を向くと悠真の姿が見当たらない。

「悠真! どこ!?」

 人でごった返す店内。悠真を呼ぶ声はすぐにかき消されてしまう。

「まさか、外に出ちゃったんじゃ……」

 外に居た人は車に戻るか店内に逃げ込んで来ているだろうこの状況、外へ出て居ればすぐに見つかるはずだがその分危険が増える。

 外へ出ていませんようにと願いつつも、万が一を考えた真彩は人の流れに逆らいながら外へと出て行った。
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