愛し愛され愛を知る。【完】
 時同じくして理仁はというと、人々が騒いでいた『拳銃を持った男』と対峙していた。

「東堂に頼まれたのか? それとも、檜垣か?」
「答える義理は無い」
「こんなとこでそんな物騒なもん出してんじゃねぇよ。お前、組の人間じゃねぇな」
「黙れ。答える義理は無いと言っている」
「…………目的は何だ? 金で雇われたんだろ? それなら今の報酬の倍をやるから俺に付け」
「俺は金なんか興味ねぇから、そんな交渉は無駄だ」
「そうか。なら用件を言え。俺を殺す為に送り込まれた……だけじゃねぇんだろ?」

 理仁は後を尾けられている頃から相手の狙いが誰だか分かっていた。自分も候補には入っているだろうが、本当の狙いは別に居て、それは何としてでも守らなければならない相手――つまりは真彩が狙われていると確信していた。

(真彩は店の中に居るはずだ。朔は騒ぎを聞き付けて様子を見に来るだろうが、こうなる事を想定して指示は出している。焦る事はねぇ……)

 勿論こういった状況に陥る事も想定済みだった理仁は(あらかじ)め朔太郎に、危険な状況に陥った場合、真彩と悠真の安全を最優先に考えて行動しろと指示を仰いでいた。

 だから、理仁は朔太郎を信じ安心していたのだが、状況は最悪だった。
< 147 / 210 >

この作品をシェア

pagetop