愛し愛され愛を知る。【完】
「あー、りひといた!」

 騒ぎを知らない悠真は一人外へ出て来てしまい、姿の見えなかった理仁を見つけると笑顔で向かって来る。

「悠真! 店に戻れ!」

 これには流石の理仁も焦りしか無かった。今すぐに走って悠真の元へ駆け寄りたいが、生憎男に銃を向けられている。しかも男の狙いが真彩だとすれば悠真の事も調査済で、人質に取る恐れもあった。

 額に汗を滲ませた理仁に、表情一つ変えず銃を向け続ける男。

 そんな二人を見つけた朔太郎は二人の視線の先に悠真が居るという最悪の状況に絶句した。

 そして、

「悠真!!」

 最悪の状況は更に悪化の一途を辿り、標的である真彩までもが外へと出て来てしまったのだった。

「朔! 悠真を守れ!!」

 こうなると迷っている場合ではない。比較的悠真の近くに居る朔太郎に悠真を守るよう指示した理仁は、相手の男が自分に向けている拳銃を真彩に向け直そうとしている事を瞬時に察知し、懐に隠してあった自身の銃を取り出すと迷わず男の手に一発撃ち込んだ。

「くっ!」

 しかし相手は相当な手練で、咄嗟に避けたのか掠っただけのようで小さく呻き声を上げるも逆の手で拳銃を持ち替えて真彩を狙う。

「真彩、伏せろ!!」

 ギリギリで真彩の元へ辿り着いた理仁がそう叫ぶと同時に銃が撃ち込まれた。

「きゃあ!?」

 寸前で理仁が真彩に覆い被さる形で倒れ込むと、騒ぎを聞きつけたのかパトカーが数台サイレンを鳴らしながら近づいて来ていた。
< 148 / 210 >

この作品をシェア

pagetop