愛し愛され愛を知る。【完】
常に危険と隣り合わせだけど怖くない
「マーマ! いっしょにあそぼ?」

 朝、皆が朝食を食べ終えて各々が出掛けて行った事もあって屋敷内には数人の組員しかいない状況の中、暇を持て余した悠真は忙しなく動いている真彩の元へやって来るや否や『遊ぼう』と声を掛けてくる。

「悠真、ママは今お仕事してるから遊べないの。良い子だからお部屋で遊んでてくれるかな?」

 相手をしてあげたい気持ちはあるものの、鬼龍家はとにかく広く部屋数も多い上に朔太郎や翔太郎を含め、十人の組員が共に生活している事もあって何をするにも時間がかかる。

 それでいてこの屋敷に家政婦が真彩以外いないものだから真彩の仕事が減る事はない。

 仕事を終えて手が空いた組員たちが手伝ってくれるまでは全ての家事を一人でこなさなければならないので悠真の相手をする時間が殆ど取れないでいた。

「ひとりいや! つまらない!」
「悠真、我がまま言わないの」
「いや!」

 これまで悠真はあまり我がままを言う事もなかったのだけど、生活環境が大きく変化した事や強面の大人たちが沢山居る中で生活をしているせいか、不安もあるのだろ。

 屋敷に来てから約二週間が過ぎたものの一人は不安なのか常に真彩にベッタリ状態。

 こうなると何を言っても聞かない事を分かっている真彩は暫く無視をするという強行手段に出る。

「マーマ! ねぇってば!」

 しかし悠真も負けじと真彩に話し掛け続け、結局折れるのはいつも真彩の方なのだけど、

「悠真、(あね)さんは忙しいんだから我がまま言うなよ。俺が遊んでやるから部屋行くぞ」

 庭の掃除が済んだ朔太郎が台所に顔を出した事で、真彩は作業を中断せずに済む事になった。
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