愛し愛され愛を知る。【完】
 そもそもあの時撃たれたのは自分のせいだと気付いてしまった真彩。自分のせいで理仁にもしもの事があれば、どうすればいいのか分からなくて不安だったのだ。

(理仁さんは、分かってたんだ。尾けられているのは、私が狙いだったって……それなのに、私や悠真の事ばかり心配して……こんな……)

 麻酔が効いて眠り続けている理仁の横で、起こさないよう静かに涙を流す真彩。

 このままではいけないと思いながら、これから自分はどうすればいいのかを考えていた。

(きっと、私を狙ってるのは……惇也なんだ。納得したのは演技……思い通りにならないなら、私を殺そうとしているのかもしれない……)

 確証はないけれど自分を狙っているのは惇也で、それならばこれ以上鬼龍組の皆に迷惑をかける訳にはいかないと感じていた。

(私はどうなってもいいけど、悠真だけは危険な目に遭わせられない。間違ってるのは分かってるけど、悠真の事だけは、お願いしよう)

 考えが纏まった真彩はバッグからメモ帳とペンを取り出すと何かを書き始めた。

 そして、いくつかの小さなメモを残すと、

「理仁さん、ありがとうございます。私のせいでこんな目に遭わせてしまって、ごめんなさい」

 未だ眠っている理仁の額に軽くキスをした真彩は、静かに病室を後にした。
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