愛し愛され愛を知る。【完】
「おい理仁、お前まだ安静してなきゃ駄目だろうが」

 騒ぎを聞きつけた医者である坂木(さかき) 結弦(ゆずる)が理仁を一喝するも、

「うるせぇ! 俺の身体なんてどうでもいいんだよ! 坂木、お前なら分かるだろ? 自分を犠牲にしてでも守りたい思いが。分かってるなら放っておいてくれ!」
「……それは分かるが、お前が万全じゃなけりゃ、アイツの二の舞になっちまうぞ」
「分かってる。けどそんなヘマはしねぇよ。俺は死んだりはしねぇ。まだまだ死ねないからな」
「……分かった。これは痛み止めだ。飲んでいけ」
「恩に着る。それと、悠真の事を頼むよ」
「ああ、任せろ」

 理仁の熱意に負けた結弦が痛み止めの錠剤と水の入ったペットボトル手渡すと、お礼と悠真の事を頼みながら受け取った理仁はそのまま病院を出て行った。


「理仁さん、身体、平気なんですか?」
「駄目でも行くしかねぇんだよ。真彩を見捨てるなんて出来ねぇだろーが」
「そう、スよね。兄貴たちが各方面に連絡してくれてるんで、すぐに応援が来ると思います。俺たちは当初の予定通り箕輪のアジトっスか?」
「いや、八旗の事務所だ。まずは檜垣に会う。恐らく真彩は自ら檜垣に連絡を取っただろうから、一緒に居るはずだ」
「了解っス!」

 若干辛そうな理仁に代わり、惇也と真彩が居るであろう八旗組の事務所までここから車で約三十分程の道のりを運転し始めた朔太郎は内心自分を責めていた。
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