愛し愛され愛を知る。【完】
 まさか真彩が一人で出て行くとは思いもしなかったから仕方ないと言えばそれまでだけど、何故気が付かなかったのかという後悔ばかり。

「朔、自分を責める必要はねぇ。この件は俺にも責任がある」
「そんな、理仁さんには何も……」
「あるんだよ、寧ろ……全ては俺が招いた結果なんだよ、これは」

 理仁のその言葉の真意は分からなかった朔太郎だけど、これ以上自分が発言する状況じゃない事を察して黙り込む。

(俺のせいだ。俺がもっと、自分の想いを真彩に伝えるべきだったんだ、遠回しな言葉じゃなくて、ハッキリ伝えるべきだったんだ……俺にとって、どれ程大切な存在なのかを)

 理仁も真彩も、お互いの間に家族以上の大切な想いが芽生えている事を、本当は知っていたのかもしれない。

 けれど、拒絶されてしまった時の事を考えると恐くて確かめられなかった。

 その結果が、今回の事件を招いてしまった。

 互いを大切に想い、守りたい気持ちは同じなのに、すれ違って、から回っていく。

(真彩、無事でいてくれ……)

 神に祈るなんて柄じゃないと思いつつも、今は願う事しか出来ない理仁は藁にもすがる思いで神に祈りながら車に揺られていた。
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