愛し愛され愛を知る。【完】
「理仁さん……」
「真彩、無事か」
「はい……その、もう、大丈夫なんですか?」
「ああ、それよりも、何故勝手に出て行ったんだ」
「……書置きの通りです……狙いは私だって分かったから――」
「おいおい、俺が居ること忘れてんのか? 勝手に話してんじゃねぇよ。真彩、来い!」
「きゃあっ!」

 下っ端の男に連れて来られた真彩が理仁と勝手に会話をしている事に腹を立てた惇也は真彩の腕を掴むと、乱暴に自分の元へ引き寄せる。

「真彩、鬼龍の組長さんはお前をどうにかして助けたいらしい」
「理仁さん……」
「けどな、俺はそれじゃあ納得出来ねぇんだよ。ただな、組長さんは自分が犠牲になる代わりにお前を助けて欲しいそうだ」
「そんなっ! それは駄目です!」
「そうだろう? お前はそう言うと思ったよ。だからな、俺はお前に選ばせてやる事にした」
「選ばせる……?」
「檜垣、いい加減にしろ!」

 理仁の制止も虚しく、惇也は話を続けた。

「俺が真彩(おまえ)を殺すか、それとも、真彩(おまえ)鬼龍の組長(アイツ)を殺すかをな」
「なっ……」

 その言葉に真彩は絶句した。どちらを選んでも、自分たちに明るい未来は無いからだ。
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