愛し愛され愛を知る。【完】
番外編―プロローグ―
 ――結婚から約一年後。


 理仁と結婚しても日常生活に特に変わりのない真彩はいつも通り家事に勤しんでいた。

 悠真は小学校へと通い出してから周りの友達の影響もあって朔太郎や真彩にベッタリという事も減りつつあり、最近では強くなりたいと言って空手を習い始めていたりする。

「姉さん、そろそろ買い物行きますか?」
「あ、うん、そうだね。今日は悠真の習い事の日だし、帰ったらすぐおやつを食べられるように準備しなきゃだから今のうちに行こうか」

 今日は買い出しに行く日とあって、悠真が帰宅する時間までに済ませてしまおうと買い出しの付き添い担当でもある朔太郎が真彩に声を掛けていざ出掛けようというその時、

「うっ……」
「姉さん?」
「ご、ごめん、ちょっと気分が……」

 急な吐き気に襲われた真彩は心配する朔太郎の横を通り過ぎると急いでトイレに駆け込んだ。

 実は数日前から度々吐き気に襲われていた真彩。

 初めは季節の変わり目で体調を崩したのかもと思ったりしていたものの、熱や風邪の症状がない事、ふと思えば月のものが暫く来ていない事に気付く。

「……これって、やっぱり……」

 悠真を身篭った時にも同じような事があり、恐らく妊娠しているのではと直感した。

「……とりあえず、調べてみないとね」

 悠真の時は初めての事で戸惑いや不安しか無かったものの、二度目ともなると慌てたりはしない。

 トイレから出て部屋に戻った真彩は心配する朔太郎に笑顔を向け、

「ごめんね、もう大丈夫だから行こうか」
「姉さん、具合が悪いなら俺一人で行きますから、姉さんは休んでてください」

 そう声を掛けるけれど、具合が悪いなら一人で行くと朔太郎が言う。

「ううん、本当に大丈夫。私も買いたいものがあるから一緒に行かせて?」
「……姉さんが、そこまで言うなら……」

 本来ならばお願いしたいし有難い申し出ではあるものの、流石に検査薬を買って来てと頼めるはずもない真彩。

「けど、絶対無理しないでくださいよ?」
「うん、約束するね。ありがとう」

 何とか朔太郎を説得して一緒に出掛けることになった真彩は、朔太郎の運転する車でいつものスーパーへと向かう事になった。
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