愛し愛され愛を知る。【完】
「おはようございます、真彩さん」
「おはよう翔太郎くん。理仁さんは……」
「兄貴はもう出ました。何でも今日は九州まで行く用事があるとか。帰りは明後日になるそうです」
「そう……なんだ」

 忙しい彼を労う事すら出来ていない真彩は自分の不甲斐なさに気落ちする。

 それに気付いた翔太郎が何かを言いかけた、その時、

「姉さん!」

 いつになく慌てた表情の朔太郎が、

「悠真、熱があるみたいで、姉さんを呼んでるッス」

 一緒の部屋で寝ていた悠真の体調が悪くて呼んでいると真彩に伝えに来た。

「最近学校で風邪が流行ってるって、お知らせのプリントにも書いてあったものね。今行くわ」

 理仁の事も心配だけど、今は悠真を優先しなければならない真彩は気持ちを切り替えて朔太郎の部屋へと向かって行く。

「ママ……」
「大丈夫? 今日は学校休んで病院行こうね」
「びょういん、やだ……」
「でも、辛いの治らないと困るでしょ? 学校にも行けないよ?」
「それもやだ……」
「大丈夫、ママが付いてるから、一緒に行こうね」

 熱があって辛いのと病院に行きたくないと嫌がる悠真を宥める真彩。

 結局病院に行った悠真はウイルス性の風邪で暫く学校を休む事になり、真彩自身も体調が優れないものの原因が分かっている事もあってまだ大丈夫と自分の事は後回しで悠真の看病をしていたのだけど、

(……凄く怠いし、身体も重い……)

 思っていたよりも体調の悪化が激しく、

「姉さん、そろそろ俺が変わりますよ……って、姉さん大丈夫ですか!?」
「……朔太郎くん……」

 真っ青な顔で(うずくま)る真彩を前にした朔太郎は慌てて駆け寄った。
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