愛し愛され愛を知る。【完】
「ちょっ……え!? あ、そうだ、救急車呼ばなきゃ!」
「だ、大丈夫! 大丈夫だから、救急車は、呼ばないで……」

 慌てふためく朔太郎が救急車を呼ぼうとするのを全力で止める真彩。

「いや、だって……」

 まだ黙っていようかと思っていた真彩だけど、朔太郎のこの慌てようと、検査の為に病院へ行く事になれば送迎をしてくれる彼には分かってしまう事だと思い、

「大丈夫、病気じゃないから……。その、実はね、子供が……出来たみたいなの」
「…………へ?」
「あくまで検査薬でだけの事だから確実……ではないけど、症状からしても間違いない、と思う……」
「こ、ども…………そ、そうなんスね! それはおめでとうございます! あれ? でもそれ、理仁さんは知ってるんスか?」
「ううん、まだ……。病院で検査して貰ってから、言おうと思ってるの。忙しくしてるのに、万が一違ってたら申し訳ないから」
「そ、そうか。……いや、でも何ていうか、こんな大切な事を俺なんかが最初に聞いちゃって、良かったんスかね……」
「朔太郎くんには車を出してもらう事になるから、どの道初めに話す事になってたと思うの。だから気にしないで」

 真彩と話す朔太郎は、喜ばしい話なのに彼女が浮かない表情をしているのが気になったものの、

「それはそうと、俺が悠真見てるんで! 姉さんは部屋で休んでください! 無理は禁物ッスよ!」
「ありがとう、それじゃあ、少しだけ休ませてもらうね。何かあったらすぐ呼んでね」

 今は未だ顔色の優れない真彩を部屋で休ませるのが先決とその場では浮かない表情の理由を聞く事をしなかった。
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