愛し愛され愛を知る。【完】
「――やはりそうだったのか」

 理仁が地方から戻って来た日の夜、悠真を寝かせた真彩は二人きりの部屋で子供が出来た事を告げると、理仁は「やはりそうか」と言った。

「理仁さん……気付いていたんですか?」

 それには真彩も驚き、思わず聞き返してしまう。

「確信は持てなかったが、そうじゃないかとは思ってた。最近は忙しくてなかなかお前や悠真との時間を持ってはやれないが、俺なりに気を配ってるつもりだ。勿論、俺一人では無理だから朔や翔にも手伝ってもらっているがな」
「理仁さん……」

 彼の言葉に真彩の心が熱を帯びていくのを感じた。

 忙しい中でも自分や悠真の事を心配してくれている、その事がもの凄く嬉しかったのだ。

「……すみません……」
「何故謝る?」

 自分たちの事を誰よりも思ってくれている理仁を前にしたら、一人で色々と悩んでいた事が申し訳なく思ってしまい気付けば謝罪の言葉を口にした真彩。

 それを不思議に思った理仁はベッドに腰掛けると、

「真彩、こっちに来い」

 手招きをしながら真彩を呼び寄せ、遠慮がちに横に座った彼女の身体を優しく抱きしめた。

「……理仁、さん」
「悪いな。お前には淋しい思いをさせて」
「いえ、いいんです。お仕事ですから、気にしないでください」
「真彩、俺はな、どんなに忙しくてもお前や悠真の我儘は極力優先したいと思ってる。何か不安に思う事やして欲しい事があれば……遠慮せずに言って欲しい」
「……その気持ちだけで、充分ですよ」
「いや、駄目だ。お前はすぐに我慢するから、俺は心配なんだよ。それに今は一人の身体じゃねぇんだぞ? 言いたい事は何でも言ってくれ。な?」
「……理仁さん……それじゃあ、私が今、不安に思ってる事を聞いてもらっても、いいですか?」
「ああ、聞くさ。何でも話せ」

 理仁に抱きしめられたまま、真彩は先日朔太郎に打ち明けた悩みを話し出す。

 そして、それを聞き終えた理仁は少し間を置いた後、こう口した。
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