愛し愛され愛を知る。【完】
「真彩の不安は最もだ。今の悠真には分からない事だが、いずれ必ず何か思う事はあるはずだ。ただ、俺はそうなった時にどう対処するかが重要だと思ってる。それは今じゃない。不安な気持ちは分かるが、今は新たな命を授かった事を、素直に喜ぼう」
「……そう、ですよね」

 真彩にもそれは分かっていた。

 悠真の事が気掛かりなように、自分の元へ来てくれた新たな生命を心の底から喜んであげられていなかった事もずっと気掛かりだった。

「……ごめんなさい、私……」
「真彩は悪くない。いや、誰も悪くはねぇよ。今はとにかく身体にも心にも負担を掛けないよう、ゆっくりしててくれ。暫くは家の事も全て組の奴らにやらせるか」
「ありがとうございます。でも、病気じゃありませんから、出来る範囲内で出来る事をやります。皆さんには今まで通りお手伝いをしてもらえたら助かります」
「そうか? まあ、お前がそう言うならそれでも良いが、とにかく、無理だけはするなよ?」
「はい、分かってます。理仁さんも、忙しいとは思いますけど……無理はしないでくださいね」
「ああ、分かってる」

 久しぶりに触れ合った二人は見つめ合うと軽く唇を重ね合わせる。

「……っ、……ん、……はぁ……」
「……真彩」

 本当なら、もっと激しく口付けを交わし、余すところなく愛し、深く繋がり合いたいという思いが頭の片隅にある理仁だけど、今は真彩の身体に負担を掛けない事が一番だと理解しているので自身の欲望には気づかないフリをする。

 暫く口付けを交わし、真彩に負担をかけない程度に互いの温もりを確かめ合った二人は、幸せな気持ちのまま眠りについた。
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