愛し愛され愛を知る。【完】
 皆が出て行き、真彩と悠真を見守り続けていた理仁は二人の元へ歩いて行くと、

「悠真、いつまでも泣いてると、赤ちゃんに笑われるぞ?」

 未だ泣き続けていた悠真を宥めるように頭を撫でながら声を掛けた。

「赤ちゃん、まだここにいないのにもう分かるの?」
「今はなママのお腹の中で、色々な事を聞いてるんだぞ?」
「そうなんだ? すごいね! ゆうま、早く赤ちゃんに会いたいなぁ」
「そうだな、それは皆んな同じ気持ちだ。けどまだ暫くはママのお腹の中で過ごさなきゃならねぇからな、その間悠真はお兄ちゃんになる為に、ママを助けて朔や翔の言う事を聞いて、お手伝いを沢山するんだ。出来るか?」
「うん!」
「偉いな」

 理仁に肩を抱かれ、悠真と理仁のやり取りを眺めていた真彩の涙腺は再び緩み、

「……ママ、だいじょうぶ? どっかいたい?」
「真彩?」

 今度は隠すことなく、自然と溢れ出る涙を零していた。

「ごめ……、違うの、どこも痛くないよ。ただ、嬉しくて……」
「うれしい?」
「うん。悠真が、赤ちゃんの事を喜んでくれて、凄く、嬉しいの」
「そっか! ゆうま、いいお兄ちゃんになるからね!」
「うん……ありがとう、悠真」

 こうして新たな生命の存在を皆が祝福する事になり、真彩の中にあった悩みは解消され、穏やかな日常を送れるようになったのだった。
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