愛し愛され愛を知る。【完】
 悠真と真彩の安全は確保出来た事で、ひとまず理仁は安心して問題に取り組める事になったのだが、事態は芳しくない状況が続いていた。

 近頃ニュースでも組織絡みの事件が多発していると取り上げられ、屋敷に居ても気の抜けない日々が多くなっていた。

 そんな中でも真彩の体調やお腹の子供に問題無く、これで抗争も早く落ち着いてくれれば安心出来るのにと真彩は常日頃思っていた。

 けれど、それからひと月半が経つ頃には事態が悪化の一途を辿ってしまう。


「え!? 理仁さんが撃たれた!?」

 悠真が再び学校へ通い出していた頃、家事を終えた真彩が部屋で寛いでいると、お茶の用意をして来ると行っていた朔太郎の声が廊下から聞こえてくる。

 しかも、『理仁が撃たれた』という聞きたく無い最悪な言葉が。

「朔太郎くん! 今の……」
「あ、姉さん……」

 聞こえた瞬間、真彩は部屋を飛び出して廊下で誰かと電話していた朔太郎の名を呼んだ。

「理仁さんが撃たれたって……」
「はい、その、まだ詳しい事はよく分からないんスけど、組織の喧嘩を止めようと仲裁に入ったところを撃たれたとか……」
「そ、それで、今理仁さんは?」
「ひとまず病院に運ばれて、すぐに手術を受けるそうで」
「朔太郎くん、私をそこへ連れて行って」
「けど、今理仁さんは静岡ですし、ここからだと車で距離もありますから姉さんの体調を考えると……」
「お願い! 私なら大丈夫だから、ここで待つだけなんて、出来ない……少しでも近くに、傍に居たいの……」

 このところ真彩の体調には少し波があった。

 それでも、入院する程では無いし、無理さえしなければ問題無いと言われていたから無理の無い範囲で日常生活を送っていたのだけど、流石に遠出は少し不安もあった。

 それでなくても理仁が撃たれたという最悪な報せを受けて精神的にもダメージを負っている状態なのだから。

 そんな中、朔太郎は悩んだ末に、

「分かりました。これから兄貴が病院に向かうところだったので、姉さんも一緒に行きましょう。但し、少しでも体調に何かあったらすぐに言ってください、それだけは約束してください!」

 体調に問題が生じた場合は我慢せずすぐに話すという条件付きで真彩も共に連れて行く事になった。

 そして、屋敷や悠真の事は真琴や他の組員に任せ、翔太郎、朔太郎、真彩の三人は車で理仁が運ばれたという静岡のとある病院まで向かって行った。
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