愛し愛され愛を知る。【完】
「中城さん! 俺はこんなところで呑気に寝てる訳にはいかねぇんだよ! 頼むから今すぐ行かせてくれ!」

 朔太郎に止められひとまずベッドの上に座ったままの理仁は、病院から出る事を許可して欲しいと懇願する。

「あのなぁ、お前、一回心臓止まったんだぞ? 正直危険な状況だったんだ。少なくとも、後二、三日は安静にしてろ。経過次第では一日くらい退院早めてやるから」
「無理言ってんのは承知の上だ。一時的にでもいい、頼むから、真彩の傍に行かせてくれ!」

 中城はすぐに退院させろという願いに首を振らないものの、一時的にでもいいと言う理仁の言葉に少し悩む素振りをした後で、

「……ったく、本当頑固な奴だな。おい海堂兄弟、コイツが無理しねぇようしっかり見張れるって約束出来るか?」

 翔太郎と朔太郎に理仁が無理をしないように見張れるかを確認した。

「勿論です。必ず、約束します」
「俺も、約束します!」
「……分かった。とにかく、鬼龍はまだ歩ける身体じゃねぇから車椅子だ。準備するからどっちか一人付いて来い」

 結局三人の熱意に根負けする形で一時的に出掛ける事を許可した中城。

 理仁と車椅子をワゴン車に積んだ翔太郎たちはこの場所から三十分程の場所にある産婦人科まで向かって行く。

 そして、

「真彩!」

 朔太郎に押されて車椅子で真彩の入院する病室までやって来た理仁は、ドアを開けるなり病院という事を忘れているのか大きな声で真彩の名前を口にした。
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