愛し愛され愛を知る。【完】
 家事を終えて理真と悠真の居る部屋へ戻ってくると、理仁が部屋の前に立っている。

「理仁さん……何して――」

 そんな理仁を不思議に思った真彩が声を掛けるも、口に人差し指を当てて黙るようにという仕草を見せた彼を前に思わず自身の口を塞ぐ。

 そして、部屋の襖の前に立つと、中から悠真の声が聞こえて来た。

「りーま、早くいっぱいあそべるようになってねー! おしゃべりもたくさんしたいねー! お兄ちゃんがいろんなこと、おしえてあげるからね!」

 それは理真相手に悠真が話し掛けているもので、いつも自分の事を“悠真”と言っているのに理真の前では“お兄ちゃん”と言っているという新たな発見が出来た真彩と理仁。

 そんな微笑ましい場面に出会して良かったと思いながら、暫く二人にしようと隣の部屋に入って行った。

「悠真、本当に理真の事が大好きで、何だか嬉しいです」
「理真が成長するにつれて理真自身も悠真を好きになるだろうから、相思相愛だな」
「ふふ、確かに。理真もきっと、お兄ちゃん大好きっ子になりますよね」

 真彩は悠真が理真を大切に思ってくれている事が本当に本当に嬉しかった。

 お腹の中に赤ちゃんがいると知って悲しむ悠真を見た時は、やっぱり兄妹なんて作っては駄目なのかと思ったし、もっと成長して理仁との血の繋がりのについて知った時、理真は理仁が本当の父親だけど自分は違う、自分の居場所は無い……そんな疎外感を感じないかという不安がやはり心の片隅にあったものの、理仁は悠真にも理真にも変わらない愛を注いでくれるし、それを悠真も絶対感じていると信じているから、いつしかそんな不安も消えていた。
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