愛し愛され愛を知る。【完】
「ちょっと悠真、何処に行くの?」
「おそとでる!」
「悠真一人じゃ出れないよ?」
「ママも!」
「あのね、ママはお仕事が終わらないと駄目なの。我がまま言わないで良い子にしてなさい」
「いーや! おそといく!」

 こうなると意地でも引かない事を分かっている真彩は余裕があれば多少相手をする事もあるが、今日はいつも以上にやる事が多くて相手をしている余裕がない。

「もう悠真! 我がままばっかり言ってるとママ怒るよ?」

 余裕がない事もあって、いつになく強い口調で叱ってしまった真彩。怒られたと分かった悠真は徐々に泣きそうな表情を浮かべていく。

「あ、ごめん、ちょっと言い過ぎちゃったね……」
「うっ……ひっく……ママのバカ! きらい!」

 悲しむというより不貞腐れてしまった悠真は涙を流しながら『バカ』『嫌い』という言葉を残して部屋に戻ってしまう。

「真彩さん、お騒がせしてすみませんでした。引き続き見てますので」
「いえ、こちらこそ本当にすみません。よろしくお願いします」

 真琴は軽く頭を下げると悠真と真彩の部屋へ戻って行き、

「……はぁ……」

 それを見送った真彩は小さく溜め息を吐く。悠真を怒ってしまった事を後悔しつつも業務に取り掛からなければならない真彩はさっさと仕事を片付けて、おやつに好物でも作ってご機嫌を取ろうと作業を再開した。

 けれど、今日の悠真は虫の居所が悪いのか何をしても全く機嫌を直してはくれず、大好物のホットケーキを作っても不貞腐れたままで、朔太郎が予定より早めに帰宅すると彼に付いて離れない。

「悠真、いい加減にしなさいよ? 朔太郎くんは帰って来たばかりで疲れてるのよ?」
「いや! さくとおそといく!」
「姉さん、俺なら平気ッスから。公園に連れて行きましょうよ」
「でも……」
「少しでも出れれば満足すると思いますし」
「……ごめんね、本当に」

 結局朔太郎の提案で悠真を近くの公園に連れて行く事になり、公園に着いた悠真の機嫌はすっかり良くなった。
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