愛し愛され愛を知る。【完】
「姉さん、どうぞ」
「ありがとう、朔太郎くん」

 住宅街にある少し大きな児童公園の砂場で砂遊びをする悠真からも近くにあるベンチに腰を下ろした真彩と朔太郎。

 側の自動販売機でホットのミルクティーを買っていた朔太郎は真彩に手渡した。

 日中はそこそこ暖かさがあるものの十月も半ばに差し掛かった今、陽が落ちてくると気温は一気に下がって身体が冷えるので、ただ座っているだけの二人にはホットの飲み物が身体を温めてくれる必需品。

「悠真、今日はいつになく機嫌悪かったッスね」
「やっぱり、朔太郎くんが居ないと駄目みたい」
「あはは、まぁ俺的にはそう言って貰えると嬉しいッスけどね。やっぱり真琴くんじゃ駄目だったかぁ」
「金井さんも良くやってくれてるんだけど、悠真は一緒に遊んでくれないと不満みたいで」
「ああ、まぁ真琴くんはそういうの苦手ッスからね。悠真は肩車とかすると特に喜ぶんスよ」
「そうそう、肩車は私じゃちょっと無理だからね」
「そうッスよね。そう言えば……悠真の父親って、もう亡くなってるんでしたっけ?」
「え? あ、うん……」
「それじゃあ余計、肩車とか憧れますよね。実は俺も父親いないんスよ」
「そうなの?」
「まぁ俺んとこは父親がろくでもない奴で母親が見捨てたってだけッスけどね」

 悠真の父親の事を聞かれた真彩は一瞬焦りを見せた。それに気付いていた朔太郎は自分の話をしつつ少し迷った後、

「……聞いちゃマズい事なら答えなくいいんスけど、悠真の父親と何かあったんスか?」

 遠慮がちに悠真の父親について尋ねる朔太郎。

「……朔太郎くんになら、話してもいいかな。実はね、悠真の父親は――生きてるの」

 真彩はポツリポツリと悠真の父親について話し始めた。
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