愛し愛され愛を知る。【完】
「ごめんね朔太郎くん、行ってあげてくれるかな? ここで機嫌を損ねたら大変になるから」
「了解ッス!」

 残っていたコーヒーを一気に飲み干した朔太郎は近くのゴミ箱に缶を投げ入れると悠真の方へ走って行く。

(……話しちゃった、悠真の父親が生きてる事、私が未婚だって事。きっと、理仁さんにも伝わっちゃうかな。でも、鬼龍組の人たちになら知られても大丈夫だよね)

 今まで出会った人たちには心を許せず、話す事が無かった悠真の父親や未婚の事。あくまで住み込み家政婦としての立場ではあるものの、皆良くしてくれて家族のように過ごしている真彩は鬼龍組の人たちになら話してもいいかと薄々思っていたところもあって、今回話せた事で少し心が軽くなっていたようだが、

「でも、あの人の事は……話したくない……もう、思い出したくもないから……」

 悠真の父親がどういう人だったのかという事だけは話す気になれない様子の真彩。

 そんな真彩の様子を悠真の相手をしながら見ていた朔太郎。実は先程の話をしたのは理仁から頼まれていた事で、どうやら理仁は裏で真彩の事を色々と調べているようだった。
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