愛し愛され愛を知る。【完】
「朔、お前阿呆か? そんなとこに俺が行ったらおかしいだろーが」
「そんな事ないっスよ? ねぇ、姉さん!」
「はい、勿論です。理仁さんさえ良かったら是非一緒にどうですか?」
「せっかくだが、俺はそういうとこは苦手だから――」

 朔太郎や真彩に誘われるも遊園地なんて自分には合わないと乗り気になれない理仁。そんな様子を見ていた悠真は、

「……りひともいくの?」

 くまのぬいぐるみを抱きしめ、真彩の後ろから遠慮がちに問い掛けた。

「悠真、理仁さんを呼び捨ては駄目だ! 俺らなら全然いいけど!」
「すみません理仁さん! 」

 呼んだ当の本人は何故周りが慌てているのか全く分かっていない様子できょとんとしている。

 実は悠真は理仁の事をまだ名前で呼んだ事がなくて、今初めて名前を呼んだのだ。

 名前で呼びたいと思えるようになったという事は心を許し始めている証拠なので、それについては喜ばしい事なのだけど、朔太郎や翔太郎を呼ぶ時と同じ感覚で呼んだものだから当然呼び捨てになるのも仕方が無い。

 しかし、いくら子供と言えど流石に組長である理仁を呼び捨てというのは如何なものかと真彩たちは焦り、何とか悠真に呼び方を改めてさせようとする。
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