愛し愛され愛を知る。【完】
「わぁー!」

 日曜日、開園時間より少し前に辿り着いた真彩たち。

 時間になって中に入るや否や、人の多さに少々うんざり気味の理仁をよそに、悠真は瞳を輝かせながら嬉しそうな声を上げる。

「ママ、くまさんいる!」
「本当だねぇ。大きいくまさんだね」
「くまさぁん!」
「あ、悠真! 勝手に行っちゃ駄目よ!」

 大きなクマが出迎えてくれているのを見つけた悠真は喜び、繋いでいた真彩の手を振りほどいて近くへ行こうと走り出すも、

「こんな人混みで迷子になったら大変だぞ?」

 理仁にひょいと身体を抱き上げられて行く手を阻まれてしまう悠真。

「あー! くまさんのとこいくの!」

 止められてしまった事に機嫌を損ね、ぐずり出す悠真だったけれど、

「分かった。今連れてってやるから暴れるな」

 あやす代わりに肩車をし、クマの所へ近付いて行く理仁。そんな彼の行動に満足した悠真は、

「ママ、さくもきて!」

 再び機嫌を直し、後ろに立っている真彩と朔太郎を手招きしながら側へ来るよう呼び寄せた。

「悠真、嬉しそうッスね」
「うん」
「何だかんだ言って、理仁さんもかなり嬉しそうッスけどね」
「あんなに嬉しそうな顔見たの、初めて」
「俺もっスよ? あんな表情見た事ないっス」
「そうなの?」
「はい。理仁さんって基本無表情だし、仕事中はやっぱり少し怖いし。家でもそんなに表情緩めるとか無かったっスけど……何つーか、姉さんや悠真が来てから少し変わったんスよ。良い意味で」
「そうなんだ」

 傍から見ると、今の理仁と悠真はまるで親子のよう。いつも朔太郎とじゃれている悠真だけど、それとはまた違う楽しさや安心感を感じているように真彩は思っていた。
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