愛し愛され愛を知る。【完】
「何か、ああしてみると理仁さんと悠真、親子に見えますよね」
「うん、私もそう思ってた。多分、悠真もそんな風に感じてるんじゃないかな?」
「かもしれないっスね」
「やっぱり、あのくらいの年頃じゃ父親の存在が恋しいよね……」
「うーん、まぁ言われてみると、俺もそんな頃があったかもしれない。けどまぁ、俺には兄貴が居たからまだ寂しくなかったかな」
「そっか。翔太郎くんとは四つ離れてるんだよね?」
「はい。だから俺よりしっかりしてたし、幼いながら母さんに負担かけないよう色々やってくれてました」
「翔太郎くん、しっかり者だものね」
「そうっス! 俺の自慢の兄貴っスよ」
「兄弟っていいね。私自身一人っ子だったからそういうの憧れる。悠真も周りを見たらそうの思うかも。兄弟もいない、父親もいない。可哀想な事……してるよね……」
「いや、それは仕方のない事っスよ! そういう人だって沢山いる。姉さんのせいじゃないよ」
「ふふ、ありがとう。朔太郎くんは本当に優しいね」
「そんな事、ないっスよ……。…………その、この前の続きになるんスけど……悠真の父親って、どんな人なんスか?」
「…………うーん、そうだな……一言で言えば、酷い人だった……かな」

 本当なら思い出したくもないし話したくも無かったはずの真彩だけど、遊園地という楽しい場所で、周りから楽しそうにはしゃぐ声や嬉しそうな声が聞こえてくると心が緩むのだろうか。

 この場でなら話せる気がした彼女は悠真がクマと戯れている光景を眺めながら、朔太郎に悠真の父親についての話を始めた。
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