愛し愛され愛を知る。【完】
「初めは仕方がないと思った。色々な事が一気にあって落ち込むのも分かるし、自暴自棄にもなるって」
夢を諦める事になった惇也は荒んでしまい、仕事もせずに遊び歩くようになった。
それでも、恩のある真彩は彼を見捨てる事なく尽くしたけれど、惇也はそんな真彩の事さえ疎ましく思うようになっていた。
「同棲してたし付き合っていた訳だから、勿論身体の関係もあった。事故に遭って変わってしまってからは、殆ど無理矢理に近い感じだったけどね。それでも、支えてあげたいって思ってたんだけど、あの人は私以上に好きな人が出来たみたいで、ある日突然別れを切り出された。もう二度と顔を見たくない、疫病神だって言われたわ」
「それは、酷過ぎるっスよ……。事故に遭ったのは姉さんのせいじゃないのに……」
「そうね。私も思ってたよ。酷いって。でも色々な事が有りすぎて、何かのせいにしなきゃ心を保てなかったんだと思う。だけど、そうじゃ無かった。新しい相手はお金持ちのお嬢様らしくて、働かずに遊んで暮らすにはその子と付き合う方が得だと考えて私を振ったんだって」
「そんなのって……」
「まぁでも、そこまで言われたら流石の私も目が覚めたわ。いくら恩があるって言っても尽くす義理も無いって。今思えば私、そんなに愛されてなかったのかもね。同棲だって付き合ったのだって成り行きみたいなものだったし……。それで、惇也の元を去ってから暫くして……妊娠してる事に気づいたの。初めは、堕ろそうって思った。一人じゃやっていけないし、何より……あの人との子供を育てる自信なんて、無かったから」
「……けど、それをしなかったんスね」
「出来なかったの。少しずつ育っていって懸命に生きようとしてるって思ったら、出来なくなった。それに、この子に罪は無いって。だから一人で育てる決意をしたの。あんな人に頼るとかしたくなかったし、知らせても堕ろせって言われると思ったから。だから、あの人は自分の血を継いだ子供がいる事も知らないだろうし、今あの人が何処で何をしているのかも知らない。私はこれから先も悠真には言わないつもりよ、父親が生きてるって事は」
「……そう、だったんスね……」
「ごめんね、楽しい場所でこんな重い話しちゃって」
「いえ、聞いたのは俺ですから……」
真彩の過去は思いの外過酷なもので、自分から聞いたものの朔太郎はどう声を掛けたらいいか戸惑っていた。
それを感じた真彩は作り笑顔を浮かべて謝り、
「さてと、いつまでも理仁さんに悠真の相手をさせる訳にはいかないよね。そろそろ行こっか」
気まずそうな表情の朔太郎の手を取ると、一緒に理仁や悠真の元へ向かって行った。
夢を諦める事になった惇也は荒んでしまい、仕事もせずに遊び歩くようになった。
それでも、恩のある真彩は彼を見捨てる事なく尽くしたけれど、惇也はそんな真彩の事さえ疎ましく思うようになっていた。
「同棲してたし付き合っていた訳だから、勿論身体の関係もあった。事故に遭って変わってしまってからは、殆ど無理矢理に近い感じだったけどね。それでも、支えてあげたいって思ってたんだけど、あの人は私以上に好きな人が出来たみたいで、ある日突然別れを切り出された。もう二度と顔を見たくない、疫病神だって言われたわ」
「それは、酷過ぎるっスよ……。事故に遭ったのは姉さんのせいじゃないのに……」
「そうね。私も思ってたよ。酷いって。でも色々な事が有りすぎて、何かのせいにしなきゃ心を保てなかったんだと思う。だけど、そうじゃ無かった。新しい相手はお金持ちのお嬢様らしくて、働かずに遊んで暮らすにはその子と付き合う方が得だと考えて私を振ったんだって」
「そんなのって……」
「まぁでも、そこまで言われたら流石の私も目が覚めたわ。いくら恩があるって言っても尽くす義理も無いって。今思えば私、そんなに愛されてなかったのかもね。同棲だって付き合ったのだって成り行きみたいなものだったし……。それで、惇也の元を去ってから暫くして……妊娠してる事に気づいたの。初めは、堕ろそうって思った。一人じゃやっていけないし、何より……あの人との子供を育てる自信なんて、無かったから」
「……けど、それをしなかったんスね」
「出来なかったの。少しずつ育っていって懸命に生きようとしてるって思ったら、出来なくなった。それに、この子に罪は無いって。だから一人で育てる決意をしたの。あんな人に頼るとかしたくなかったし、知らせても堕ろせって言われると思ったから。だから、あの人は自分の血を継いだ子供がいる事も知らないだろうし、今あの人が何処で何をしているのかも知らない。私はこれから先も悠真には言わないつもりよ、父親が生きてるって事は」
「……そう、だったんスね……」
「ごめんね、楽しい場所でこんな重い話しちゃって」
「いえ、聞いたのは俺ですから……」
真彩の過去は思いの外過酷なもので、自分から聞いたものの朔太郎はどう声を掛けたらいいか戸惑っていた。
それを感じた真彩は作り笑顔を浮かべて謝り、
「さてと、いつまでも理仁さんに悠真の相手をさせる訳にはいかないよね。そろそろ行こっか」
気まずそうな表情の朔太郎の手を取ると、一緒に理仁や悠真の元へ向かって行った。