愛し愛され愛を知る。【完】
「ママー! ゆうま、ママとあれのりたい!」
「え? うーん、ママああいうのはちょっと苦手だから……こっちのお馬さんにしない?」

 入口で出迎えていた動物たちとの戯れが終わり、ようやくアトラクションに興味を示した悠真が初めに乗りたいと言って指差したのは子供向けのジェットコースター。

 けれど子供向けと言ってもそれなりにスピードもあってジェットコースターが苦手な真彩はあまり気が進まないので、その近くにあるメリーゴーランドにしようと提案するも、

「いや! ゆうまはあれがいい!」

 どうしてもジェットコースターが良いと譲らない。

「そっか……それじゃあ、あれにしようか」
「わーい! ママ、はやく!」

 気は進まないけれど、ここで悠真の機嫌を損ねても仕方がないと覚悟を決めた真彩が悠真とジェットコースターへ向かって歩きだそとすると、

「姉さん、ジェットコースターは俺が一緒に行きますよ! 苦手なんスよね?」

 理仁と何やら話をしながらも二人のやり取りを見ていた朔太郎が代わると言い出した。

「悠真、俺と一緒じゃ駄目か?」
「ママもいっしょがいい……」

 普段なら朔太郎と一緒で喜ぶ悠真だが、何故か今日は真彩とも一緒が良いと言う。

「ママとは別の乗り物に乗れば良いだろ? それにな、こういうのは男同士の方が絶対楽しいって! な?」
「……じゃあ、ママとはおうまさんにのる!」
「よし、じゃあ行くぞ、悠真!」
「うん!」

 朔太郎の説得のおかげで納得した悠真は、真彩と理仁に手を振ってジェットコースターへと走って行く。

「真彩、俺らはあそこに座って待つか」
「あ、はい」

 残された理仁と真彩はジェットコースターが見える位置にあるベンチに座って悠真たちが戻って来るのを待つ事にした。
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