愛し愛され愛を知る。【完】
「それにしても、朔たちがあそこまで準備していたのには驚きだったな」
「はい。飾り付けもお料理も凄くてびっくりしました」
「この家でパーティーなんてモノを開く事になるとはな」
「すみません」
「何故謝る?」
「その、悠真に合わせて色々してもらっているので、皆さんのご迷惑じゃないかと……」
「迷惑なんて事はねぇよ。そもそも迷惑だとか面倒だと思ったら家に置いたりはしねぇさ。鬼龍家(ここ)に居る限り、お前や悠真は家族も同然だ。いちいち遠慮や申し訳なく思う必要はねぇんだよ」
「……理仁さん」

 理仁の言葉で、真彩の心は暖かくなる。

 幼い頃から『家族』に憧れを抱いていた真彩だけど、その機会に恵まれる事はなくここまでやって来た。唯一血の繋がりのある家族の悠真との暮らしも決して楽なものではなくて、挫けそうになる事も沢山あった。

 けれど理仁と出逢い、高額な月収に住む場所まで提供してもらっただけではなく、他人同士ではあるものの寝起きを共にする者同士助け合い、家族の様に過ごす鬼龍組の人々。

 悠真が居る事で少なからず迷惑を掛けている部分はある筈なのに、嫌な顔一つせずに受け入れてくれただけでなくて『家族』も同然だと思ってくれている事が何よりも嬉しかったのだ。
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