愛し愛され愛を知る。【完】
「冗談……だったんですね」
「何だ? それともしてくれるのか、膝枕」

 本気にしていた真彩をからかうのが面白いのか理仁は意地悪で言ったつもりだったようだが、

「……理仁さんが、望むのであれば……」

 予想外の答えが返ってきたので、理仁は目を丸くした。

「あ、あの……理仁さん?」

 真彩は思った事をそのまま口にしただけだったのだろう。理仁が何故驚いているのか分かっていないようで控えめに声を掛けると、

「はぁ……。真彩、お前は少し無防備なところがある……そういう事を軽々しく口にするな。ここは男所帯なんだから、誰に対しても勘違いさせるような言動はするなよ」

 小さく溜め息を吐いた後、理仁は少しだけ困ったような表情を浮かべながら真彩に言った。

「……すみません、気をつけます」
「分かったならいい。時間取らせて悪かったな」
「いえ、プレゼント、ありがとうございました。それじゃあ、そろそろ失礼しますね」
「ああ。お休み」
「はい、おやすみなさい」

 理仁の部屋を出た真彩は少しだけ浮かない顔をしていた。それは何故かというと、先程のやり取りが原因だった。

(私は無防備なんかじゃないし、誰かれ構わずに言ったりしないんだけどな……)

 そう、真彩があの時理仁に言った事は考え無しでもなくて、理仁が望むのであれば、膝枕でも何でもしたいと思ったのだ。

(……家事をやるのは仕事だから当たり前なのに……それ以上望まないなんて……)

 真彩としては、何とか他の事で理仁の役に立ちたいと思っていたのだけど、結局何も思いつかずに夜は更けていくのだった。

 そして翌朝、

「うわー! ママみて! おもちゃいっぱい!!」

 目を覚ました悠真は枕元に置いてあった沢山の玩具が入った袋や箱を見て大興奮。

「本当だね。きっと悠真が良い子だから、サンタさんが沢山くれたんだね」
「わーい! ゆうま、あとでサンタさんにおれいのおてがみする!」
「そうだね、そうしたらきっとサンタさんも喜ぶね」
「うん!」

 するとそこへ、

「お、悠真、どうしたんだ、そのプレゼントの山は」
「さくー! ゆうまいいこだからサンタさんがくれたの!」
「へぇ? それは良かったなぁ! 何貰ったんだ? 俺にも見せてくれよ」
「うん!」

 悠真の嬉しそうな声を聞いた朔太郎が悠真に声を掛け、共にプレゼントの開封をし始めた。

 沢山のプレゼントに囲まれ嬉しそうな悠真を前にした真彩は幸せな気持ちでいっぱいになり、自然と笑みが零れていく。

 そして、そんな真彩の耳には昨夜理仁から貰ったハートのピアスが光り輝いていた。
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