愛し愛され愛を知る。【完】
 最近は母親離れも出来ているし、幼稚園に通える事を喜ぶかと思っていた真彩だったのだけれど、

「ゆうま、いくのやだ」

 幼稚園に通う事になったと告げるや否や、悠真は顔を(しか)めて幼稚園行きを嫌がった。

「お友達と遊べるよ?」
「さくとあそぶからいい」
「でもね、朔太郎くんもお仕事があるでしょ? いつまでも悠真とばかり遊んではいられないの。それに、悠真もそろそろお家以外で過ごす事に慣れなくちゃ駄目なのよ?」
「いや! ゆうまいかない!」
「あ、ちょっと、悠真!?」

 真彩が幼稚園に通う大切さを話して聞かせてみたものの、行きたくないと言って聞く耳を持たない悠真は真彩から逃げるように離れて勢いよく部屋を出て行くと、

「おっと、悠真。走ると危ねぇぞ」

 真彩に用のあった理仁が部屋を訪れ、危うくぶつかりそうになった所で悠真は抱き抱えられた。

「理仁さん、すみません。大丈夫でしたか?」
「ああ、問題ない。それよりも、何で悠真は不機嫌なんだ?」
「実は、幼稚園の話をしたら行くのを嫌がりまして……」
「そうか……悠真、ママと離れるのは嫌か?」
「うん……ママも、さくも、しょうも、りひとも……はなれるのいや……」

 真彩から事の詳細を聞いた理仁が悠真に問い掛けると、泣きそうになりながら幼稚園に行きたがらない理由をぽつりぽつり話始めた。
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