愛し愛され愛を知る。【完】
 どうやら悠真は家を離れて知らない人たちの中で過ごす事が不安なようなのだが、理仁はこの展開を予想していたようで、ある質問をする。

「悠真、それなら朔が一緒だったらどうだ?」
「さくもいっしょ?」
「そうだ。朔も一緒に幼稚園に行くなら行けるか?」
「……うん」
「分かった」

 朔太郎も一緒にという意味がイマイチ理解出来ない真彩が不思議に思っていると、

「真彩、ちょっと来い」

 悠真を抱いたまま理仁は真彩を呼び寄せ、ある場所へ向かって行く。

 着いた先は離れにある建物で、理仁がドアを開けると、中には机に向かう朔太郎の姿があった。

「あれ? 三人揃ってどうしたんスか?」
「朔、来月からお前も園に行く事になった。園長に話はつけておく」
「ああ、やっぱりそうなりましたか。分かりました!」

 理仁の話を聞いてすぐに状況を理解し、全てを納得した朔太郎。

「あ、あの……朔太郎くんも幼稚園にって、どういう事なんですか?」

 離れに来て二人の話を聞いても全く理解出来ない真彩は理仁に問い掛けると、

「ああ、悪い。お前には話が見えねぇよな。実はな、少し前朔太郎に頼んで悠真が保育園や託児所に通ってた頃の話を聞いてもらってたんだが、話を聞く限り幼稚園行きを良く思わなさそうだったから、先手を打っておいた」

 こうなった経緯(いきさつ)を話し出した。

 朔太郎が悠真に話を聞いたところによると、保育園や託児所に行っていた頃も、何度か行きたくないと思った出来事があったという。
< 87 / 210 >

この作品をシェア

pagetop