愛し愛され愛を知る。【完】
 それというのも他の園児たちが父親と遊んだ話をするからで、その話を聞いた理仁は幼稚園の話をすれば行きたがらないかもしれないと考えた。

 そこで、どうすれば通ってくれるかを考えた時、いつも一緒に居る朔太郎が同じ空間に居れば通えるかもと思い、朔太郎には前もって話をして、悠真が幼稚園行きを嫌がったら『保育補助者』として園でアルバイトをする事になっていたのだ。

「――そういう訳で、朔太郎は来月から園でアルバイトをする」
「悠真の事は任せてください! 通っちゃえば案外楽しみになると思いますし、全然問題ないっスよ!」
「……ごめんね、悠真のせいで朔太郎くんにはいつも迷惑ばかりかけて……」
「いやいや、迷惑なんかじゃないっス! それに、理仁さんからはこれを機に資格も取得しろって言われたんで、今は通信講座で勉強もしてるんスよ」
「そうなの?」
「やってみると結構楽しいし、園でのアルバイトもプラスになると思うから俺自身も楽しんでくるので、姉さんが申し訳なく思う事はないっス!」
「うん、分かった。これからも悠真をよろしくお願いします。でも、無理だけはしないでね」
「丈夫が取り柄なんで、平気っス!」
「これで園の問題は一先ず解決だ。後で入園にあたって必要な書類の記入を頼むぞ、真彩」
「はい」

 こうして入園問題は片付いたのだけど、悠真が幼稚園に通い始める事で真彩たちの運命が大きく変わっていく事を、この時はまだ誰も知る由も無かった。
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