愛し愛され愛を知る。【完】
「ママー」

 悠真が幼稚園に通うようになってから数週間がたった頃、初めは不安そうにしていたものの日を追う事に楽しそうな表情を見せていた。

 そんな中、理仁の計らいで悠真の幼稚園での様子を見に行く事になった真彩が姿を見せるや否や、満面の笑みで悠真が走り寄ってきた。

「悠真」
「ママ! みてー! これゆうまがかいたの!」
「凄いねー上手だね」
「えへへ」

 普段の送り迎えは全て朔太郎が担っているので真彩が園に来るのはごく稀な事だからか、悠真は凄く嬉しそうだ。

「姉さん、園長が色々話したいそうなんで」
「あ、うん」
「ほら悠真、次はお遊戯の時間だぞ」
「悠真、頑張ってね」
「うん!」

 朔太郎に誘導された悠真を見送った真彩は園長室へ歩いて行く。

「神宮寺です、失礼します」
「いらっしゃい。待ってたよ」

 悠真の通う【スメラギ幼稚園】は鬼龍組前組長である理仁の父親の知人、(すめらぎ) 壱哉(いちや)が運営する施設。

 壱哉は四十五歳とまだまだ若く、理仁にとっては兄のような存在でもある。

「悪いね、悠真の様子を見に来てるのに呼び出して」
「いえ、とんでもないです!」
「今日は少し君と二人で話をしたいと思ってね」

 悠真の入園準備から入園初日まで理仁も一緒だった事が原因だったのか、壱哉は理仁抜きで話がしたいようで呼び出した事が窺える。
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