愛し愛され愛を知る。【完】
「全国に多くの組織が存在していて、東西南北の四区域に区切られる。鬼龍組の他、箕輪(みのわ)組、砂山(さやま)組、俺の居る柳瀬(やなせ)組の四組織が東区域を取り仕切っている上位組織だ」

 まず壱哉が説明を始めたのは鬼龍組の位置関係について。

「柳瀬組と鬼龍組は協力関係にあるが、箕輪組、砂山組は鬼龍組とは敵対関係にある。小耳に挟んだんだが、君は前に猿渡組の連中に絡まれたらしいね」
「あ、はい……」
「猿渡組は箕輪組の傘下組織なんだ。だから猿渡の奴らは鬼龍をよく思っていない」
「そうだったんですね」
「特に、箕輪と鬼龍は元から関係が良くないんだ。先代が死んだのも、箕輪との抗争が原因だったからな」

 壱哉の話を聞けば聞く程、真彩は自分が身を置いている場所が危険な所なんだと改めて思い知る。鬼龍家に住み始めた当初も同じ事を感じはしたものの、慣れた事や平穏な日々が続いていた事ですっかり忘れかけていたのだ。

「君の存在は各方面に知れ渡っているのと同時に、悠真がいる以上これから先、人との交流は避けられないだろう。いくら朔太郎たちが付いていたとしても危険な状況に出くわす事はある。今までとは違う状況にいるという事を肝に銘じて、これからを過ごして欲しいと思ってる。俺は勿論、柳瀬組もサポートはするけど、全てを把握する事は難しいからね」
「……分かりました、気をつけます」
「それから――」

 話を続けようと口を開いた壱哉だったけれど、

「園長、ちょっといいっスか」

 それは朔太郎の声によって遮られた。
< 91 / 210 >

この作品をシェア

pagetop