愛し愛され愛を知る。【完】
「ゆうまくん、またあそぼーね」
「うん」

 お互い住んでいる所も知らず、次また会える保証はないけれど、幼い二人はそんな事を思いもしないのだろう。またねと手を振って別れ、それぞれ別方向へ歩いて行く。

「理仁さん、どうかしましたか?」
「……いや、あの二人、どこかで見た気がしたんだが……」
「莉奈ちゃんたちを知っているんですか?」
「まぁ、取り引き先の子供かもしれねぇな」
「そうですか」

 駐車場へ向かって歩いている最中、莉奈たちをどこかで見た事があると言っていた理仁は思い出せない事が気になるのか、少々表情が険しくなる。

「ママ、りなちゃんといつあそべるの?」
「うーん、そうだねぇ、いつかなぁ」
「ようちえんでもあそべる?」
「莉奈ちゃんとは幼稚園違うから、それは無理かな」
「じゃあこうえんであそべる?」
「うーん、まぁ会ったのも公園だから、もしかしたら遊べるかな?」
「じゃあゆうま、またこうえんいく!」
「そうだね、また今度ね」

 悠真は莉奈を気に入ったようで、次はいつ遊べるのか真彩に聞いていた。

 駐車場に着いて車に乗り込み、朔太郎が運転をして立体駐車場の出口へ向かって行くと、その途中で偶然莉奈たちが車に乗り込む所を見つけた悠真。

「あ! りなちゃんだ!」
「本当だ」

 声を掛けたがった悠真の為に朔太郎が後部座席の窓を開けると、大きな声で莉奈の名前を呼んだ。
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