愛し愛され愛を知る。【完】
「りなちゃーん!」
「あ、ゆうまくん!」

 悠真の声に気付いた莉奈は笑顔を向けて呼び返すと、車は止まることなく徐行しながら進んで行くので、二人は手を振り合っていた。

 そんな何気ない微笑ましい光景だったのだけど、莉奈の乗る車の中にはある人物が後部座席に乗っていて、悠真の隣に居た真彩を一目見ると言葉を失った。

「……おい莉奈、今の奴は誰だ?」
「ゆうまくんだよ。このまえこうえんであったの」
「そうか」
「おい作馬(さくま)、次アイツらに会ったら名前聞いて来い。その悠真って奴の母親の名前をだ」
「は? どうして?」
「いいから、聞いて来い。ちょっと、知り合いに似てるんだよ」
「ふーん? ま、会えたら聞いとくよ。そもそも悠真って子の名前しか知らねぇし、また会える保証はないけど」
「つーかお前、危機感足らねぇぞ。よく知りもしねぇ相手を莉奈と遊ばせるなよ。子供(ガキ)だろうと気を許すな」
「うるさいなぁ、そんなに言うなら自分で莉奈の面倒見ろよ。俺、子供(ガキ)は苦手なんだって」
「俺だって苦手だよ。つーか、お前もまだ十分子供(ガキ)だっつーの。文句言わずにやれよ」
「はいはい」

 莉奈たちの車内でそんな会話が行われていた事を真彩たちは当然知る由もなく、何やら不穏な空気が漂い始めていた。
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