王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
「ち、違うのよ。分けてもらいたいと思ったわけじゃなくて、今度はリアンと同じパンを買おうかなと思っただけで……」
「でも食べてみたいんでしょ? いいよ、俺の食べかけでよければ」
「え……いやでも、家族じゃないのに食べかけをもらうのはちょっと……あ、リアンが嫌とかじゃなくてね!? 一般論だからね!?」
慌てて説明するものの、リアンは悲しげに目を伏せた。
しゅんと、うなだれた子犬のような様子にクレアは焦りが募る。
「……じゃ、じゃあ、一口もらっても……?」
恋人でもないのに、こんなことを言うなんて、はしたない。
しかし、彼はまだ十四歳。クレアよりも年下だ。きっと自分が自意識過剰なのだろう。
年齢的には彼は恋人というより弟に近い。いくら背が伸びて眼差しも大人っぽくなったとはいえ、淑女たるもの、弟のような存在に心を惑わせてはいけない。
羞恥心で顔が火照っていくのを感じながら返答を待っていると、「ふ……くっ……」と笑いをかみ殺した小声が聞こえてきた。うつむいていたリアンが目尻の涙を指先でぬぐって笑う。
「冗談だよ、冗談。家族でもないのに、さすがにそんなこと言わないよ」
「でも食べてみたいんでしょ? いいよ、俺の食べかけでよければ」
「え……いやでも、家族じゃないのに食べかけをもらうのはちょっと……あ、リアンが嫌とかじゃなくてね!? 一般論だからね!?」
慌てて説明するものの、リアンは悲しげに目を伏せた。
しゅんと、うなだれた子犬のような様子にクレアは焦りが募る。
「……じゃ、じゃあ、一口もらっても……?」
恋人でもないのに、こんなことを言うなんて、はしたない。
しかし、彼はまだ十四歳。クレアよりも年下だ。きっと自分が自意識過剰なのだろう。
年齢的には彼は恋人というより弟に近い。いくら背が伸びて眼差しも大人っぽくなったとはいえ、淑女たるもの、弟のような存在に心を惑わせてはいけない。
羞恥心で顔が火照っていくのを感じながら返答を待っていると、「ふ……くっ……」と笑いをかみ殺した小声が聞こえてきた。うつむいていたリアンが目尻の涙を指先でぬぐって笑う。
「冗談だよ、冗談。家族でもないのに、さすがにそんなこと言わないよ」