王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
「ちょっともう……本気にしたのに! 演技ならそう言ってちょうだい!」
「先にネタばらしをしたらクレアの反応が見られないじゃん。でもいい感じに肩の力もほぐれてきたんじゃない?」

 言われて、はたと気づく。

(た、確かに……さっきまでの緊張はもうないわ。うう、でもこんな方法を使わなくたって……)

 感謝したい気持ちと、からかわれて悔しい気持ちとがせめぎ合う。
 数秒の葛藤の後、抗議の言葉をグッとこらえて、クレアはふっと肩の力を抜いた。

「もう降参よ。リアンのおかげで気分が楽になったわ。……ありがとう」
「そう? ならよかった」

 屈託ない笑顔を向けられて、不覚にもドキッとしてしまう。クレアを神殿から連れ出してくれたのは、ただの親切心からだろうに。
 変な勘違いを起こさないように、クレアは話題を変えた。

「そういえば、外国に行くって言っていたけど、向こうでの暮らしはどうだったの?」
「あー……、文化の違いには驚かされたね。礼儀作法も違うし、この国のタブーが向こうでは常識だったりして……慣れるまでが大変だったかな」
「へえ、そうなの。食生活も違っていた?」
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