王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
「そこまで大きな違いはなかったけど、調理方法が独特な料理もあったよ。あと、クレアが好きそうなお菓子もたくさんあった。蓮の形をしたお菓子は本物みたいに精巧で、食べるのがもったいないくらいだったな」

 リアンとは、数年前まで店員と常連客という間柄だった。自然と話題は料理のことが多かったため、食の好みはお互い把握している。

(それが本当なら、なんて芸術的価値の高いお菓子なのかしら……! じっくり本物をこの目で見てみたいものだわ)

 聖女になる前、クレアは休日によくお菓子作りに勤しんでいた。
 弟妹たちが喜んでくれるし、自分で食べたいものをたくさん作れて一石二鳥だったからだ。
 だが本音を言えば、自分で作るより、食べるほうがもっと好きだ。美味しいものは心を満たしてくれる。見た目が可愛ければ可愛いほどいい。
 うっとりと手を合わせてお菓子のことをあれこれ考えていると、リアンが謝ってきた。

「ごめんね、お土産には向かないお菓子だったんだ。俺もぜひクレアに食べてほしかったんだけど、生ものだから長時間の持ち運びは適していなくて……」
「……えっ、わたし、願望を口に出していた?」
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