王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
 そんな中で、クレアだけ普通に接してくれていた。だから彼にとって、自分は心を許せる特別な存在なんだと少し嬉しくもあったのに。

(一体どこの誰よ!? リアンに余計な知識を植え付けたのは……っ)

 リアンが女たらしになったら、どうしてくれる。彼にはあの頃のまま、純粋のままでいてほしかったのに。いきなり知らない男に成長してしまったみたいで、ショックが大きい。立ち直れないかもしれない。

「ねえ、突然しゃがみ込んでどうしたの? お腹でも痛い?」
「…………ううん。ただ、リアンが知らない人みたいに思っちゃって……。ちょっと心を落ち着けているところだから……。少しだけ待っていて」
「知らない人? それこそ俺の台詞だよ」
「え?」

 驚いて顔を上げると、リアンが右手を伸ばしていた。反射的にその手を握ると、そのまま引き上げられる。反動でふらついていると、彼の腕が背中を支えてくれた。だけど安定感を取り戻すと、すぐに彼の手は離れてしまう。
 そして、お礼を言おうとクレアが口を開くより早く、リアンが不服そうに言葉を並べ立てる。

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