王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
 もともと、クレアの結婚相手は第一王子だった。それが思わぬ理由で第二王子に変わったのだ。悠悠自適に過ごしていた第二王子は突然王太子に指名されただけでなく、本人のいないところで結婚相手も決められ、さぞ驚いたことだろう。内心では憤慨している可能性だってある。
 第二王子に婚約者はいなかったようだが、想う相手ぐらいはいたかもしれない。もし、そうであるならば。

(わたしはまた……意図せず、誰かの恋路の邪魔者になっているのかもしれない)

 けれども、最初からクレアに拒否権はない。実質、家族を人質に取られている身だ。
 初心を思い出せ。家族のためなら聖女だろうと邪魔者の王太子妃だろうと、なんだってやってみせる。そう心に誓ったはずだ。
 聖女の仕事を放棄しない限り、クレアならびに家族の生活は保障されている。一時に比べれば、毎食の食事や調度品だって、ぐんと質のいいものに変わった。おかげで弟妹の生活費や進学費の心配もしなくていい。

 自分は大丈夫だと言い聞かせる一方で、ひとつの不安が脳裏をよぎる。

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