王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
 そこには見目麗しい王太子がいた。
 二歳年下と思えないほど、堂々した佇まいは凜々しくも美しい。今までなんとも思わなかった、白を基調とした王族の正装は彼の魅力を最大限に引き上げているようで、否応なしに視線が釘付けになる。その姿絵を世に出せば、さぞかし飛ぶように売れるだろう。

 だが、今はそれよりも――その髪色に内心の動揺が抑えられない。

 王族の象徴でもあるライラックの髪は、国王や第一王子と同じ色だ。王妃譲りの青灰色の瞳はクレアをすぐに見つけ、緊張するこちらを見透かしたように優しく微笑む。
 金縛りに遭ったように動けない中、王太子はクレアの前で跪いた。水色のマントに金糸で縫われた、白百合と剣が交差した国章が翻る。

「クレア嬢、お初にお目にかかります。ジュリアン・シェラ・ディクスと申します。このたびは急な縁談となってしまいましたが、どうぞよろしくお願いいたします」
「――はじ、めまして……?」

 頭の中で疑問符が飛び交う中、ジュリアンが真摯な眼差しを注ぐ。
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