王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
「常識の範囲でなら存分に仲を深めるがよい。心を通わせるには対話が不可欠だ」
国王からの許しにジュリアンは粛々と退室の礼をした。それに倣う形でクレアもその場を辞去し、二人で謁見の間を出る。重厚な扉が閉まり、無意識にほっと息を吐き出した。
「クレア嬢。お手をどうぞ」
リアンのときとは違うトーンの声で、ジュリアンが屈んで優雅に手を差し出す。クレアはおずおずと自分の指先を差し出した。
目が合うと、安心させるように優しい笑みを向けられて、心臓が早鐘を打つ。
既視感のある眼差しだ。そこまで考えて、ユリシーズが愛おしそうに婚約者を見つめる視線と同じなのだと気づく。
クレアは今、婚約者として扱われているのだ。
そのことを理解すると、耳まで赤くなったのがわかった。聖女として敬われることは慣れていたはずなのに、なぜだか笑顔が引きつってしまう。
(うう……ユリシーズ殿下と一緒のときは普通に振る舞えていたのに。全然うまく取り繕えない……)
以前はどのように演じていたのか、まるで思い出せない。思い出そうとすればするほど、記憶の中にある青灰色の瞳の持ち主が頭の中でちらつく。
国王からの許しにジュリアンは粛々と退室の礼をした。それに倣う形でクレアもその場を辞去し、二人で謁見の間を出る。重厚な扉が閉まり、無意識にほっと息を吐き出した。
「クレア嬢。お手をどうぞ」
リアンのときとは違うトーンの声で、ジュリアンが屈んで優雅に手を差し出す。クレアはおずおずと自分の指先を差し出した。
目が合うと、安心させるように優しい笑みを向けられて、心臓が早鐘を打つ。
既視感のある眼差しだ。そこまで考えて、ユリシーズが愛おしそうに婚約者を見つめる視線と同じなのだと気づく。
クレアは今、婚約者として扱われているのだ。
そのことを理解すると、耳まで赤くなったのがわかった。聖女として敬われることは慣れていたはずなのに、なぜだか笑顔が引きつってしまう。
(うう……ユリシーズ殿下と一緒のときは普通に振る舞えていたのに。全然うまく取り繕えない……)
以前はどのように演じていたのか、まるで思い出せない。思い出そうとすればするほど、記憶の中にある青灰色の瞳の持ち主が頭の中でちらつく。