王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
 そして、たどり着いた先は王族が私生活を営むプライベートゾーンだった。調度品の質がぐんと上がる。国宝級の絵画や壺が並ぶ廊下を歩いていると、ふとジュリアンが立ち止まった。
 護衛騎士が扉を開け、深みのあるブラウンを基調とした家具が目に入る。

「ここは私の私室です。人払いも済ませてありますので、どうぞ遠慮なく寛いでください」

 応接間のテーブルには、淹れ立ての二人分の紅茶と、花をかたどったクッキーが用意されていた。そして先ほど彼が言ったように、侍女や従者の影はない。護衛騎士は扉の前で待機している。
 つまり今、ここにいるのはクレアとジュリアンだけ。
 ジュリアンに勧められて二人がけのソファに腰かける。凝った意匠が施されたソファは座り心地も申し分ない。沈みすぎず、かといって硬すぎず、適度な柔らかさだ。長時間座っていても疲れないだろうなと思わせるほど、一流の職人が手間暇かけて作った家具だとわかる。
 対面の一人がけのソファに座ったジュリアンは、優雅な所作で紅茶で喉を潤していた。一連の動きも絵になるほど洗練されている。
 急に場違いな気がして、クレアは自然と肩に力が入る。
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