王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
静寂に包まれたバルコニーで、クレアは手すりに両手を置く。
視線を上げれば、流れてきた雲が月を覆い隠していた。空から銀色の明かりが失われた中、夜風で葉が擦れる音がやけに大きく響く。囁き声のような音にしばらく耳を傾ける。
「でも……わたくし、聞いてしまったのです。王太子殿下は隣国に恋人がいるという噂」
聞き捨てならない単語が聞こえてきて、ドキリとした。
(恋人……?)
盗み聞きはよくない。そう頭でわかっていても、足は声のするほうへ近づく。できるだけヒールの音を立てないよう、そっと足音を忍ばせて一歩ずつ進む。
「あら、その話なら私も耳にしましてよ。特定の女性とずっと行動を共にしていたとか。でも王太子となってしまった今、その恋は忘れるしかないのでしょうね」
声の主は一枚越しのカーテンの先にいるようで、思ったよりも距離が近い。
まさか、聖女がすぐそばの柱で聞き耳を立てているとは考えていないだろう。夜風がふわりとカーテンを揺らしている。そのため、先ほどより鮮明に内容が聞き取れた。
噂好きの令嬢たちの会話は楽しげに続く。
視線を上げれば、流れてきた雲が月を覆い隠していた。空から銀色の明かりが失われた中、夜風で葉が擦れる音がやけに大きく響く。囁き声のような音にしばらく耳を傾ける。
「でも……わたくし、聞いてしまったのです。王太子殿下は隣国に恋人がいるという噂」
聞き捨てならない単語が聞こえてきて、ドキリとした。
(恋人……?)
盗み聞きはよくない。そう頭でわかっていても、足は声のするほうへ近づく。できるだけヒールの音を立てないよう、そっと足音を忍ばせて一歩ずつ進む。
「あら、その話なら私も耳にしましてよ。特定の女性とずっと行動を共にしていたとか。でも王太子となってしまった今、その恋は忘れるしかないのでしょうね」
声の主は一枚越しのカーテンの先にいるようで、思ったよりも距離が近い。
まさか、聖女がすぐそばの柱で聞き耳を立てているとは考えていないだろう。夜風がふわりとカーテンを揺らしている。そのため、先ほどより鮮明に内容が聞き取れた。
噂好きの令嬢たちの会話は楽しげに続く。