王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
 彼も怪訝に思っているだろう。クレアが返事を書けなくなってから、ジュリアンからのカードも届かなくなった。単純に公務が忙しいだけかもしれない。しかし、違う理由からだとすれば。

(わたしは……どうしたらいいの?)

 大きな窓から見える青一色に染められた空と反対に、クレアの心は靄がかかったように一向に晴れる気配がなかった。

 ◆◆◆

 初夏の陽射しを遮る東屋は人気のない離宮にあるからか、閑散としている。
 夏色に染まる庭園を背景に、クレアはジュリアンと向かい合って紅茶を飲んでいた。周囲に人はおらず、護衛も離れた場所で待機している。
 久しぶりに気兼ねなく話せるため、ジュリアンも砕けた態度でリラックスしている。王太子としてかしこまった態度のときは少しさみしく感じていたが、距離を置きたい今は逆に以前に戻りたい気持ちが強い。
 少しでも気持ちを落ち着けようと、切り分けられたタルトを一口食べてみる。

(……っ!? 酸味と甘みの比率が見事だわ)

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