王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
「ん? クレアは外で働くのが好きでしょ? 一つの場所に留めるつもりはないよ。結婚はしてもらうけど、君の生き方まで縛ることはしない。聖女は特別だ。王太子妃という地位よりも尊ばれる存在でもある。多少の無理なら俺が通す。だから、クレアは自分がしたいようにしていい」
「……本当に? いいの?」
「もちろん。あと、君の帰る場所は俺の胸の中だったらいいなと思っている。君におかえりを言うのは俺でありたい。……だめかな?」

 だめだと思った。
 このままでは早晩、クレアは呼吸困難で死ぬ。
 首を傾げてこちらを見つめる、純粋な子犬のようなキラキラした視線を直に受け、恋愛耐性のない心臓は今にも破裂寸前だ。その行動は天然なのか計算なのか、クレアにはわからないが、とにかく刺激が強すぎる。
 いろんな意味で目の前がまぶしい。目がくらみそうだ。
 心臓がときめきで活動停止してしまう。そのくらいダメージがあるのだ、ジュリアンの言葉ひとつひとつは。

 でも、彼は聖女だからと決めつけずに、自分の考えを尊重してくれる人だ。

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